| ホーム | 研究目的  | 成果概要 | 著書 | 論文 | 学会発表 | 企画 | リンク | 

キーワード
心的時間
印象
知覚
意識
アイステーシス

メンバー紹介
■研究代表者
三浦佳世(九大)
■研究分担者
一川 誠(千葉大)
荒生弘史(広国大)
河邉隆寛(九大) (所属変更により22年度まで)
■連携研究者
山本健太郎(九大)
佐々木恭志郎(九大)


成 果

平成24年度の成果
 本年度は、時間の知覚、印象、感情に関し、以下の知見が得られた。

* 知覚情報処理の時間特性に関する精神物理学的検討:精 神物理学的実験により、危険な印象を喚起させる画像はそれが提示された時間間隔を伸長し、視覚情報処理の時間解像度を向上させることを明らかにした。ま た、表情の動的変化を示す画像では、意味論的特性の変化に関し、表情特有の予測的処理が行われることを示した。さらに、身体運動とその視覚的フィードバッ クの時間的再較正に関しては、注意資源を必要とすることを示した。

* 運動のまとまりが時間知覚に及ぼす影響: ア モーダル補完により四本のバーの運動がまとまった単一物体の動きとして知覚される錯視刺激では、補完が生じる場合(大局運動)は生じない場合(局所運動) に比べ、バーの物理的な動きは等しいにも関わらず、有意に長く知覚された。この結果は、運動のまとまりが時間知覚を伸長させることを示唆する。
 
* 数の順序と時間知覚:数の大きさが継時的に大きくなる刺激は小さくなる場合に比べて時間的に短く知覚された (実験1)。同一空間上に同時に提示された場合も、数が左から右へ大きくなる刺激では、小さくなる刺激や数値がランダムに並んだ刺激よりも短く知覚された (実験2)。これらの結果は、数の時空間的順序が時間知覚を変容することを示唆する。

* 音声による感情認識における時間的情報と時系列処理:泣き声と笑い声の持続時間の操作に伴う印象の変化に関し、信号検出理論を適用したデータを分析し、持続時間による判断の偏りと、自閉および抑うつ傾向と判断との関係を示した。ERPを指標に、自他名の認識がゲーム課題においても早期(100ms程度以降)に自動的になされること、自他名と感情の相互作用は遅い潜時帯(500ms以降)で生じることを示した。また、同様の課題において、同時呈示されるメロディが自他名区分に影響することを示した。

平成23年度の成果
 本年度は、時間の知覚、印象、感情との関係に関し、以下の特性が見いだされた。

* 時間の知覚判断・感性判断に及ぼす諸要因の検討(1):視聴覚刺激の時間順序について知覚判断と感性判断の特性を比較した結果、刺激数や持続時間など両者に類似した影響を与える要因と、刺激の指示的要因など感性的判断にのみ影響を与える要因のあることが示された。

* 時間の知覚判断・感性判断に及ぼす諸要因の検討(2):身体運動と視覚刺激が非同期の場合の時間順応は、網膜位置や大脳半球に限定されないことが分かり、この種の順応には高次過程の関与することが示唆された。

* 感情バーストの時間操作と印象の変化: HappinessまたはSadnessを表現した音声であっても、立ち上がりから60ms以下の長さでは、どちらもHappinessと判断され、感情 を区別するには120ms以上の長さが必要であることが示された。また、自閉傾向者、抑鬱傾向者では、感情認識に異なる時間を要することが示された。

* 時間知覚に及ぼす速度と時間周波数の影響:運動・点滅刺激を用い てその知覚時間を測定したところ、点滅刺激の効果量は刺激の呈示時間に比例したが、運動刺激では一定であった。また、運動刺激は静止刺激よりオンセットが 先に知覚された。これらから、時間知覚における速度の影響は知覚タイミングの変化によるものであることを指摘した。

* 速度変化による時間の歪み:速度変化する対象の観察時間は、速度 変化が直線的であれ断続的であれ、減速対象の方が長く知覚されることが再確認された。一方、等速対象では、速い対象と遅い対象の知覚的な観察時間の差は序 盤で大きいことがわかった。したがって、速度変化による時間の歪みは、刺激呈示の時間軸での相違に依存すると考えられる。

 その他、かつて行われた実験をもとに、絵画における時間に関する論文も提出された。

■平成22年度の成果
 本年度は、各自の研究を推進するとともに、報告会および研究集会を通して相互理解を深め、今後の研究の展開について議論した。以下に、具体的な成果の一部を示す。

1.知覚時間に及ぼす対象の運動速度、速度勾配、速度印象の影響
 知覚された時間と刺激との関係を、多様な刺激を用いて調べ、高次レベルでの運動知覚や運動印象が時間知覚に影響することを明らかにした。

2.知覚時間に及ぼす対象の運動方向の影響 接近運動は知覚時間を過小評価させることを明らかにした。

3.表現された運動方向の速度印象 表現された運動方向(モーション・ラインライン)において、速度印象に差のないことを示した。

4.「今」「そこ」にある対象の判断に関わる時空間処理 対象の外見の判断が後で与えられた情報によって変容する現象を通し(eg.仮現運動時における大きさ判断)、「今」「そこ」にある対象の判断を支える時空間メカニズムの一端を明らかにし、意識と時間の関係に言及した。

5.拍の分割とリズムキープ感 拍分割を含むフレーズが一定のテンポを保ち演奏されているように感じられるタイミングは、演奏テンポによって効果に違いのあることや、この分割効果は分割部分のみの過大評価では説明できないことを通し、時間と感情との関係を議論した。

6.視聴覚情報の順序判断と注意 視聴覚刺激の前後判断の順応効果は、両方の様相に注意を向けないと生じないことを示し、感覚間における時間の統合について考察した。

7.知覚-運動対応関係と知覚時間の精度 能動的観察による視覚情報処理の時間精度を向上させる際の、手の運動と視覚的変化との一貫的な対応関係の重要性を指摘し、知覚と運動との関係を議論した。

■平成21年度の成果
 本年度は、それぞれの研究を推進するとともに、報告会を通し、互いに議論を深め、研究相互の関連性について確認した。以下に、具体的な成果の一部を示す。

1.同時性判断と能動性
フラッシュラグ効果(運動対象近傍に提示されたフラッシュの位置が知覚的にずれる現象)が、視覚処理と体性感覚処理の相互作用によって変調されることを見いだした。

2.視聴覚の同時性に関する知覚と感性の効果 視覚刺激が聴覚刺激に先行した場合、知覚的にも感性的にも同時と判断されるが、知覚判断に比べ、感性判断は許容幅の広いことを見いだした。

3.視聴覚時間補足とフラッシュ融合 聴覚刺激が視覚刺激を時間的にひきつける現象(視聴覚時間補足)がフラッシュ融合を説明することを示した。

4.拍の分割に対応する事象関連電位拍の分割されたフレーズを聴取した際の事象関連電位において、ミスマッチに反応する脳活動を確認すると共に、分割タイプによる相違を見いだした。

5.拍の分割とリズムキープ感 物理的に等間隔でなくても、リズムの等間隔感は得られる。分割部分が系統的に逸脱する場合、個人の特性によらず特定の傾向でリズムキープ感が得られること、また、この傾向は分割時呈錯覚と異なる様相を見せることを見いだした。

6.運動対象・静止対象の速度感と時間知覚 運動刺激は時間知覚を伸張させるが、この現象が物理的速度に限らず、相対的な知覚速度や速度印象によっても生じることを見いだした。

7.絵画における印象形成の時間相絵画の提示時間を変数に多様な印象の生起時間を調べ、周波数などの低次レベルから意味性などの高次レベルまで諸要因が独立して影響することを示した。

■平成20年度の成果
 本研究の目的は、心的時間に関わる3つの要素、すなわち、時間知覚、意識の時間相(事象が生じたと判断した時間)、時間印象の関連を想定した心的時間、の包括的モデルを構築することである。
 今年度は、各研究者がこのテーマのもとで複数の研究を進め、結果に基づき、今後の研究の展開を議論した。以下に、成果の一部を示す。

1)速度感と時間知覚: モーション・ラインやモーション・ブラー、姿勢など、絵画表現における速度感を調べるとともに、これらの刺激における時間知覚(提示時間の推定)を検討した。また、モーション・ラインに関しては、言語表現の速度感との統合モデルを提出した。

2)情動と時間知覚:快刺激、不快刺激における時間知覚を、連続フラッシュ抑制の手法を用いて検討し、無意識的画像提示条件において、不快刺激の提示時間が長く知覚されることを示した。

3)聴覚における時間知覚:等テンポに感じられる演奏タイミングに関し、リズム刺激を用いて実験を行い、充実時呈錯覚との関係から考察するとともに、感性印象についても言及した。

4)音脈分凝と両耳間時間差:音脈分凝が両耳間時間差よる定位を促進することを示した。

5)運動速度と知覚現象:動画像の速度が一定の影響を運動残効に及ぼすことを示した。

6)運動知覚と速度感:streaming/bouncing現象を用い、衝突音が移動時の速度感に影響することを示した。

7)視覚空間と同時性:同時性の知覚に関し、奥行き方向の提示位置との関係を検討し、提示の順序判断が空間位置に依存することを示した。また、線運動錯視を用いて,注意による視覚空間における情報処理促進に空間的異方性があることを見出した。

8)視聴覚時間捕捉:フラッシュ融合現象の仕組みを明らかにした。

9)印象の時間相:顔の魅力度や好ましさなどの印象は、30msecで生起していることを示した。


活動履歴


2012年3月5日 九州大学において研究集会および第十回感性学研究会をおこないました。

2011年3月1日 九州大学において研究集会および感性学研究会をおこないました。

2010年3月26日 九州大学において研究集会を行いました。

2010年2月22, 23日 第3回感性WSにおいて特別講演を企画しました。

2009年5月30日 日本基礎心理学会2009年度第1回フォーラム「時間とリ ズム−知覚・感性・生理−」を企画しました。

2009年2月16日 九州大学において研究集会を行いました。

Photo by m-style.  Base template by WEB MAGIC.& nbsp;  Copyright(c)2009 印象、知覚、意識を包含した心的時間についての複合処理モデルの構築 All rights reserved.